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障害者就労施設の概念を覆すアート空間
社会福祉法人わたぼうしの会 たんぽぽの家の施設があるのは、奈良県奈良市です。
まだまだ緑も多くみられる住宅街の中、
細い急な坂を上がったその先に、突如として大きな建物が現れます。
その建物こそ、たんぽぽの家の象徴でもある“アートセンターHANA”。
着いてまず目を奪われるのは、広々としたギャラリースペースです。
至る所に作品やオブジェが飾られ、カフェスペースやショップも内包している建物は、
アートセンターというだけあって現代的な美術館のような雰囲気もあります。
雨天だというのに明るく透き通った印象のギャラリーでは、
この日Tシャツ展が行われていました。
「障害者の就労施設でTシャツ展?」
そう思いながらもそのお洒落感に圧倒されつつ、
取材を忘れ思わずショッピングを楽しみたくなりました。
しかし、建物や展示物以上に印象的だったのは、アートセンターHANAに通うスタッフや、
メンバーと呼ばれる障害を持った方々の活気あふれる様子です。
「こんにちは!」とあいさつを交わしてくれる方や、
「誰を探していますか?」と気軽に声をかけてくれる方など、とにかく明るく元気!です。
溢れだすようなパワーがこちらにまで伝わってきました。
始まりはコンサートだった。
「アート」と「ケア」が同居するアートセンターHANA。そもそも、どうしてこのような空間ができたのでしょうか。
たんぽぽの家の始まりは、39年前に開かれた音楽コンサートにありました。
そのコンサートとは、障害があり養護学校に通う人が書いた詩に、
音楽好きな若者が、メロディーをつけた曲を歌うという趣旨のものでした。
それまで、自分の想いを主張する機会を持たなかった養護学校の生徒が綴った
「障害をもっているけれどデートがしたい」といったような率直な気持ちが、
歌となって多くの人に届けられました。
コンサート活動は評判を呼び、全国に広がりました。
その後、音楽だけでなく、舞台・芸術祭・フォーラム・ワークショップなど
様々な芸術活動に発展しました。
そして、障害のある人とアートの繋がりを作り出すきっかけになったのです。
施設内だけではない、全国への働きかけ
「たんぽぽの家」の施設長・成田修さんは、50歳とは到底思えない、若々しい男性です。
人あたりが良く優しい雰囲気でありながら、芯の強い方というイメージを持ちました。
「たんぽぽの家が、芸術活動やコンサートを続けているのは、
障害に対する社会の目を変えたいと思っているからです。
今でも、障害というとやっぱり負のイメージとして捉えがちです。
障害があると、それを克服しようとか、より健常者に近づくことが幸せ。
という考えになってしまうけど、それって自分の人生を否定し続けることになっちゃいますよね。社会や本人が見ている障害に対するイメージを変えたいって思っています。」
現在、アートセンターHANAには障害を持った人が約50人通って、
絵を描いたり織物を織ったりしています。
そこで作られた作品は“エイブルアート・カンパニー”というシステムを通して、
企業の商品やパッケージデザインなどに採用されています。
この“エイブルアート・カンパニー”は、アートセンターHANAで活動する障害者だけでなく、
公募で全国の障害者の作品も集め、企業との間を取り持っています。
「もし、目の前の彼らが絵を描いたり詩を書いたりできるようになるだけでいいなら、
現場での活動だけでいいかもしれない。
でも、現場からヒントを得ることで、全国各地の人たちが同じように享受でき、
それが普遍化されていければ非常に良いと思います。
現場の社会化っていうのか、社会の価値観までも変えていくことができたら、
これほど面白い仕事はないって思っています。」
社会の価値観を変える仕組みは、エイブルアート・カンパニーだけにとどまりません。
その1つに“Good Job!”というプロジェクトがあります。
企業と障害を持つ方とが、ワークショップなどを通して共同で1つの商品を作り上げるこのプロジェクトは、“インクルーシブデザイン”という手法を用いられており、
例えば高齢者や障害のある人、子どもなど、一般的に使いやすく、
それでいて魅力的な家具や雑貨など、様々な物を生み出してきました。
障害者の持つ個性や価値観を新しい価値として物づくりに生かしておられます。
次のステージを見越した働き方
「今は、人材の獲得が難しい時代です。介護福祉職はなおさらそうですよね。
でもだからといって、いかに長く働いてもらえるかを考えていっても
根本的な解決にはならないんじゃないかと思います。
今は転職の時代だし、いろんなキャリアを身につけて自分を磨いて、
そこから更に自分の夢に向かっていくことが促されるような現場でありたいと思いますね。
滞留するのではなく、循環させるような。」
成田さんがそう仰る背景には、たんぽぽの家独自の雇用の仕方がありました。
実は、たんぽぽの家で履歴書審査や面接などの一般の採用方法を始めたのは、
40年の歴史のうち、10年ほど前だといいます。
それまでは、ボランティアなどで出入りしていた人がスタッフとして働き始めることがほとんどでした。毎年スタッフの顔ぶれが変わることも珍しくなかったといいます。
そうやって、たんぽぽの家で働いてきた方の中には、
たんぽぽの家を通過点として自分の夢に向かって進んだ人も少なくありません。
退職後、NPOや株式会社を立ち上げたり大学の先生になったり、
多彩な道に進まれた職員もいると教えてくださいました。
「たんぽぽの家に就職してずっと働き続けることが目的ではなく、
ここで働くことで色々な社会問題と関っていきたいという視点を持ってくれればいいなと。
必ずしも障害者の問題じゃなくてもいいんだけど、
何か今の社会に対して目的意識を持っていて、
それを実現するためにたんぽぽの家と関っていくという視点が大切だなと思っています。」
障害を持った方をケアし、支えるお仕事はとても大切です。
しかし、それを終着点にするのではなく、その先に何か自分の夢があって
たんぽぽの家がその夢の後押しになって、のちに巣立っていくような働き方をしてほしい。
と成田さんは考えておられます。
「とはいっても、実は僕、長く働いているんで偉そうなことは言えないけどね(笑)」
最後にはそう言って、あっはっは!と笑い声をあげられました。
成田さんの明るく朗らかな話し方がとても印象的でした。
障害者の生活全般を支えるお仕事
そんな明るい施設長のもとで働くスタッフも、やはり明るい人が多いのが印象的。今回の募集職種の1つである、生活支援センターのヘルパー・浦さんに、
たんぽぽの家での働き方についてお話を聞きました。
もともと、福祉分野での経験が長かったという浦さんは、
障害を持った方への生活支援業務に就いておられます。
生活支援の仕事内容は大きくわけて3つあります。
1つめは障害者のご自宅に行き、外出の介助や身の回りのお世話をすることです。
これは平日の昼間であることが多いといいます。
2つめは夕方2時間、年中無休で稼働する放課後等デイサービスです。
ここでは障害を持った子ども達と一緒に活動をします。
そして3つめは、土日に企画する障害者・障害児が一緒に楽しめるイベントです。
出勤はシフト制、時には施設で外泊される方に付き添う夜勤のお仕事もあるそうです。
ご自宅での生活を支え、学校帰りの子どもたちと遊び、休日のイベントまで企画するのですから、まさに障害を持った方の暮らしを丸ごと支援されているのです。
「生活支援は本当に色々あります。
お家に行ってお話聞くだけの時もあるし、掃除したりお風呂に入れたり、子供と一緒にもの作りをしてクラフトマーケットに出品したり・・・もう何でもします。
土日のイベントも、子どもから大人まで参加するので面白いですよ。
小学生と60歳の人が一緒に踊れるダンスイベントをしたり、皆でお出かけしたり。
6月は、6だからロックだ!!って、楽器を子どもと作って、
カツラとサングラスで変装して遊びました。
面白いイベントでは、わざわざ雨に降られに行くっていうイベントもあるんですよ。」
お話を伺うだけで何とも楽しそうなイベントばかり。
自由な発想をそのまま生かせるのがたんぽぽの家の良いところでもあるようです。
「こうあるべき、こうしなくては、という概念がないんです。
この時間で何かをしなくてはならないのではなく、
“存在自体が支援になる”と捉えていいよ、って言ってくれるのがたんぽぽの家なんです。」
今までの経歴も価値になる。
4年前にたんぽぽの家で働き始めた浦さんは、興味深い経歴をお持ちです。ここに就職する前、実は海外で青年海外協力隊としてお仕事をされていたのです。
モンゴルやアフリカで、障害児者の分野で働いていた浦さんは、
それぞれの国での障害者のあり方に非常に興味をもったといいます。
「開発後進国では、日本のように障害者に対する法整備が整っていません。
けれど、実際の社会では逆に排除されていないと感じました。
障害を持っている人に自然と手を貸しているんです。
他にも、明らかに障害を持っている人でも、
結婚したり車の免許を持っていたりすることにも驚きました。
日本は障害を浮き彫りにしてしまうけれど、その感覚がないんです。
むしろ学ぶことの方が多かったですね。」
日本での常識が他の国では非常識になり得ることを、身を持って経験した浦さん。
その時培った人やモノの見方が、今のケアにも生かされているといいます。
浦さんにとっては、訪れたことの無い海外の異文化を知ることと
自分の知らないものを大切にしている障害を持った方の生活を知ることは
同じような意味を持っているといいます。
興味を持ってその人を知ろうとすることが、
浦さんのケアの原点になっているようです。
「その人の人生の、ほんの一端でも関わることができるというのは
重みのある大切なお仕事をさせてもらっているなって思います。」
彼女の言葉から、ご自分の仕事に対する誇りと、
責任感を感じることができました。
得意分野の違う4つの部門で作られたアートセンター。
アートセンターHANAではメンバーと呼ばれる障害者の方が、毎日自宅から通いながら朝の10時から15時半まで、日中活動をされています。
活動内容は、絵を描いたり陶芸や手織りをしたりする以外にも、カフェの店員・アート製品の発送スタッフ・パソコンでのワークなど様々で、自分の出来る事を生かしてそれぞれの活動をしておられます。
アートセミナーHANAで働く職員は4つの部門に分かれています。
アート・ワーク・ケア・コミュニケーションの4チームです。
それぞれの得意分野を生かしながら1つのアートハウスの中で働いておられます。
今回採用を予定されている、アートとケアの2部門の方にそれぞれお話をお伺いしました。
アート部門で働く吉永さんは、見た目もアーティスティックな若い男性です。
たんぽぽの家で働き始めて5年目で、アートセンターHANAの4つの部門をコーディネートする
“プログラムディレクター”という役職にも就いておられます。
日中は絵を描くプログラムで、
障害を持ったメンバーの制作サポートをしておられます。
メンバーの中には足で絵を描く人もいれば、
道具を使って絵を描く人もいます。
それぞれが、作りたいものを作れるようにお手伝いをするお仕事です。
表現者はメンバーであり、そのメンバーが自由に表現できるように
裏方に回ってサポートをするのが、吉永さんのお仕事です。
その他にもアート部門にいるスタッフの仕事の調整、展覧会の企画・運営やグッズ作りなどまで
幅広いお仕事を担当されています。
「メンバーが自由に作品を作れるよう、
現場でのメンバーのサポートが一番の仕事です。
ですが、作品を作って終わりにするのではなく、社会に出すことも大切にしています。
社会から反応が返ってくることによって、
メンバー自身もアーティストとして人間として、
成長していくことができますから。」
目に見えない仕事を担っている。
一方、ケア部門で働く高鍋さんは誠実なイメージの女性です。たんぽぽの家で働き始めて16年のベテラン職員です。
初めは障害者15名が暮らしている“コットンハウス”と呼ばれる福祉ホームで働いておられましたが、途中からアートセンターHANAに異動してこられました。
HANAに通う50名のメンバーが、充実して日中を過ごせるように体調面の調整をしたり、
ご家族や他施設との連携を図ったり、これからの将来の生活についてのサポートをするお仕事をされています。
具体的なお仕事内容はどういうものでしょうか?
例えば、送迎が必要なメンバーを迎えにいくのも仕事のひとつですし、
時には行われるプログラムに入って進行を手伝うこともあります。
しかし全体的なお仕事の内容が、どうもハッキリ掴みきれません。
具体的にはどういうことですか?とお伺いすると
「目に見えない仕事なのでわかりにくいですよね。」とニッコリ笑って仰いました。
「勿論トイレ介助とかも行きますが、主な仕事はやはり見えない部分を担っています。
一見何もしていないように見えるかもしれません。
ですが、そこにいることがメンバーの安心に繋がっているんです。
アートセンタースタッフとメンバーがうまく回るように、全体を見守っているという感じですね。」
ここでもやはり“存在自体が支援になる“という考え方が生かされているようです。
サポートや支援という言葉が、必ずしも具体的な行動を伴うとは限らないのだと感じました。
働く中でのやり甲斐とは?
高鍋さんは、アートセンターHANAに来る前の9年間は、福祉ホームであるコットンハウスで、メンバーの日常生活を支えていました。
異動を経験したことでそれぞれの職場での異なるやり甲斐を感じたといいます。
「前はアートセンターHANAから帰ってくる方の生活の場をサポートしていました。
生活の場では大きな変化がなく、ともすればマンネリ化してしまうと思いがちです。
でもそんな中で、住んでいる方との小さなお互いの変化に気付けたりすると喜びを持てましたし、この仕事を続けていきたいなってすごく感じました。
今度は逆に、同じ方が日中活動をされている側面を見せて貰えるようになって、
それぞれの方の可能性を感じたり、もっと充実した活動をして貰うにはどうしたらいいのかを考えたりすることがやり甲斐に繋がっていると感じています。」
対して吉永さんは、およそ殆どのことにやり甲斐を感じるといいます。
「現場でいい作品が生まれた時もそうですし、トイレ介助や食事介助がすごくうまく出来たとか、スタッフ間でいい会議が出来た時でもやり甲斐を感じます。
たんぽぽの家でやっている色んなことのうち、例えば企業さんとの交流会をうまく盛り上げるとか、どんな小さなことでも、それが最終的にたんぽぽの家の大きい活動に繋がったり、社会に対して意味がある活動に繋がっていると思っているので、やり甲斐を感じる基準は同じなんです。」
それぞれの専門分野を生かしてお仕事をされている高鍋さんと吉永さん。
見た目や雰囲気は勿論、経歴や得意とする物も全く違うこのお二人が、
同じ場所で同じ方々をサポートしていることをとても面白いと感じました。
「アート」と「ケア」。
まるでかけ離れているように思えるこの2つですが、
インタビューの中で、施設長の成田さんは「実は似ている」と仰っていました。
どこが似ているのかと思ったら、
「人を幸せにするという部分で同じ」なのだそうです。
それをお聞きして、「ああ、そうか。」と、いとも簡単に納得してしまいました。
なぜならここにいる人々は、皆とっても幸せそうに見えたからです。
メンバーもスタッフも、それぞれ個性を生かしながら実に楽しそうに活動をしておられるのです。
たんぽぽの家は、障害の有無にかかわらず自然体でいられることの喜びが、皆さんの表情からじんわりと伝わってくる、そんな居心地のいい場所でした。
(取材・文/山本由美子 撮影/箭野美里 コーディネーター/喜多舞衣)
Job description
募集職種
- 企業名・団体名
- 社会福祉法人わたぼうしの会
- 募集期間
- 2014年7月29日(火)〜8月31日(日)〆切
それ以降の募集につきましては随時こちらのサイトにてお知らせさせていただきます。
- 募集業種
- 1)介護職
・福祉ホーム「コットンハウス」-福祉ホームの生活者の介助や宿直、相談などの生活支援
・「たんぽぽ生活支援センター」-地域で暮らす障害のある人(障害児)のグループケアや生活支援など
2)相談員
・「たんぽぽ相談支援センター」-地域で暮らす障害のある人(障害児)の各種相談業務
3)栄養士
・「たんぽぽ楽食サービス」-施設の食事や配食サービスの調理・管理
4)施設支援員
・「たんぽぽの家アートセンターHANA」-絵画・陶芸・織り・カフェ・ショップなどで活動に取り組む障害のある人たちの活動支援、介護、送迎
- 雇用形態
- いずれも常勤職員
※雇用前に面談実施後、インターンシップ(現場実習)に参加。
その後、面接などを実施。
- 応募資格
- 1) 介護福祉士またはヘルパー2級必須、普通自動車免許必須
2) 社会福祉士
3) 栄養士
4) 介護福祉士またはヘルパー2級、普通自動車免許必須
- 勤務地
- たんぽぽの家(奈良市六条西)
- 勤務時間
- 1) 介護職
・コットンハウス―①②の交代制
①15:00~22:30 ②宿直18:00~8:00
・生活支援センター―9:30~21:00の間の実働8時間
2) 相談員―9:00~18:00
3) 栄養士―6:00~17:00の間の実働8時間
4) 施設支援員―9:30~18:30
- 給与
- 約17万~(経験等により相談)
- 休日・休暇
- 週休2日(コットンハウス、たんぽぽ生活支援センターについてはローテーション作成時に応相談)
- 待遇
- 年次有給休暇(6か月勤務後取得可能)、他の夏季・冬季休暇あり。
各種社会保険完備。通勤手当、住宅手当など別途支給。
- 採用予定人数
- 若干名
- 選考プロセス
- 1)本サイトよりエントリー後、直接弊社までご連絡ください。(0742-43-7055)
面談の日程調整を行います。面談の際、履歴書・職務経歴書などを持参してください。
↓
2 ) 書類審査に通過された方は、インターンシップに参加していただきます。(書類審査で不採用の方には郵送にて通知)
↓
3 )インターンシップに参加、面接を実施します。
その後、採用の可否を決定します。
↓
4 ) 勤務開始。(業務内容によって、開始時期は異なります。)
- 応募者への質問
- 1】あなたの得意なこと、自信のあることはなんですか。
2】あなたの苦手なこと、自信がないと思うことはなんですか。
- WEBサイト
- http://popo.or.jp/
- メッセージ
- 障害のあるメンバーの日常生活全般のケアや、仕事のサポートを通して、障害のある人たちの新しい可能性にふれてみませんか。 その毎日が、きっとあなた自身の可能性を広げることになります。
-
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