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お金で買えないものを直すことで、伝えていくお手伝いをする
京都・北山通から少し北のほうにある静かな住宅地の中に、松川調整所はある。伝統工芸の会社とは思えないほどモダンなビルの中に一歩入ると、
入口からすでに山積みの着物が。
そして作業場からは、修繕作業に使われる様々な機械の音が、たえまなく響いてくる。
松川調整所は、1951年創業。
もともとは出荷前の着物の検品及び補正を生業にしていたが、
着物の生産減少にともなって、既成品の手入れと修繕の仕事をメインにし始めた。
染み抜きやクリーニング以外にも、寸法直しや古びた着物の復元など、
請け負っている仕事は様々。
その技術は業界内でも評価が高く、呉服関係の企業からの大口依頼も多い。
「こんなに着物を着ている人が世間にはいるのか? と思うぐらい、
毎日大量の着物が届きます。だいたい1日100着ぐらいで、
衣替えのシーズンはさらに増えますね。他所では取れなかった汚れでも、
うちの会社なら…と言われて、持ち込まれることもよくあります」
と、松川調整所の代表取締役社長・松川重樹さん。
松川さん自身、(財)伝統的工芸品産業振興協会が認定する
「伝統工芸士」(京友禅仕上部門)の資格を持つほど、
修繕や染付の高い技術を有する職人だ。
仕事の流れは、まず着物の状態を確認して見積もりを出し、
それで問題がなければ作業に入る。
時には着物の費用以上に値段がかかる修繕もあるため、事前の見積りは必須だ。
松川調整所の場合、営業職ではなく職人が直接対応するので、
現場の状況も踏まえた上で、おおよその費用や納品予定日を
すぐに提案することができるという。
そうして現場に回された着物は、その特徴や状態などの情報を、まずPCに入力。
全職人たちが手元のPCでそれらを確認し、
それぞれの技術力に応じた修繕・加工を手がけていく。
たとえば染料を扱うような作業は、入社3年ぐらい経たないと任せられないそうだ。
そうして作業が終わったものは最終検品に回され、
合格したものはお客様の元に返されることになる。
「私たちの仕事は、お金では買えないものを直すこと。
たとえば今現在にはない技法のものだとか、あるいは母親の大事な白無垢であるとか。
そういう「お金をいくら積んだとしても絶対に手に入らない、買えないもの」
が多々あるんです。
そういうプライスレスなものを直すことで、次の世代に伝えていくお手伝いができる。
それは新しい着物を作る仕事とは、また違うやり甲斐や喜びがありますよ」
常に時間に追われる仕事。その解決策を自分自身で考えてほしい
古都京都で、日本の伝統を守る職人となる。この響きに憧れて入社を希望する若者は少なくないそうだが、
正直新入社員の定着率はそれほど高いというわけでもない。
それはこの仕事が、意外と時間との勝負になるシビアな世界という現実があるためだ。
「京都で、しかも着物の世界というと、優雅でのんびりしたイメージを
抱かれがちですが、実際はヒマなんか一切ないほど多忙です。
納期に間に合わせようとしたら、仕事の良さだけでなく、スピードも要求されます。
芸術家と違い、自分が納得する仕事ができるまで粘る、なんてことは許されません。
早くやるのも、技術のうちなんです。いわば「医者の手術」と同じですよ。
間違いのない仕事を、できるだけ早く終わらせるという(笑)。
だから自分の時間やペースを守りたいとか、
次に何をすればいいかを自分で考えられないような人は、
やっぱり長続きするのはむずかしいですね」
着物の修繕は「同じパターンの物がなかなかない」というほど内容が多彩なので、
覚えなければいけないことは山ほどある。
その上に、毎日大量の注文をこなさねばならないとなると、
確かにいっぱいいっぱいになってしまうだろう。
そのために松川調整所では、入社希望者向けに必ず会社見学会を開催し、
その状況を実際に体験してもらった上で、入社の意志を確認するようにしている。
「着物や美術などの専門知識は特に必要ないですし、手先も不器用すぎなければいい。
それよりも、すべてのモノには何か理由があり、
その問題を解決するために何をすればいいのかを、
能動的に考えられる人が理想ですね。たとえば先輩の修繕作業を見た時に
『なぜこうするのか?』を考えて、それを次に生かそうとする気持ちがほしい。
それが自分の技術の向上と作業の効率化にもつながるし、
そうなると仕事の時間も短くなっていくはずです」
外の世界に出ることで、作業場ではわからないことが見えてくる
そんな厳しい日々を乗り越えて、今や立派な職人となった一人が、今年で入社9年目を迎えた河野一平さんだ。
「留袖と振袖の違いすらわかりませんでしたからね。
ここでの初仕事は、まず着物をたたむところからでした(笑)」という状態から
仕事をはじめ、今は祇園にある支店[祇園まつかわ]の店長を任されるまでになっている。
「アーティスティックな仕事ができると思っている人が多いけど、
実際は地味で淡々とした仕事が多いです。
しかも着物の修繕は奥が深いから、最初は簡単には直せない。
指導は受けるんですけど、それ以上に自分が何十回も何百回もやって
覚えるしかない世界なんです。
ただその分、新しい技術を取得できた時はすごく嬉しいですよ」
また松川調整所では、先に書いたように職人自らが接客もするので、
ひたすら作業場に引きこもるという仕事のスタイルではない。
配達やPC入力など「そこまで職人がやらねばならないの?」という業務も多い。
しかし河野さんにとっては、逆にそれが
職人としての自覚と成長をうながす手助けになったという。
「外回りでいろいろな店を訪れると、実際に自分が扱う製品が、
どういう風に回っているのかなど、作業場に座ってるだけではわからないことを
知る機会が本当にたくさんあるんです。それにお客さんから直接事情を聞いて
『それは急がなければ』と自分が判断して作業するのと、
ただ『急いで』と言われて作業するのではずいぶん違う。
顔の見える相手のことを思うと、張り切りますよね。
特に祇園店の店長になってからは、ますますお客様と直接応対する機会が増えたので、
より『この方たちのためにしっかりやらないと』という自覚が出ています」
これから入社しようと思っている人たちには、こんな言葉が。
「最初の一ヶ月は、覚えることが多くて一番しんどかったです。
半年ぐらいで何とか仕事の内容をつかみ始めるので、そこからどんどん面白くなってくると思います。アフター5を期待する人には絶対に向いてない仕事ですけど(笑)、
お客様に『いい仕事をしてくれてありがとう』と直接言われた時の喜びは、
本当に大きいです」
修繕作業は毎日が発見。新しいゲームをプレイしている感じ
谷岡芳史さんは、上記の河野さんが言うところの「魔の一ヶ月」を乗り切って、半年目に突入したばかりの新入社員だ。
大学のサークル活動を通して日本の伝統文化に興味を持ち、
就職活動中に着物の修繕という業種を知って、今年新卒で入社。
しかし、大学ではなんと化学を専攻していたそう!
「目の前のことを一つずつこなしていくことだけで時間があっという間に過ぎていく。
仕事がイヤだとか楽しいとか、そんなことを考える時間もないほど忙しいです。
でもすでに、やりがいを感じる仕事をいろいろ任されていのはありがたいですね。
ひいお婆ちゃんの着物を孫に着せたい、とか……本当に僕たちが扱っている製品は、
一点一点が『宝物」なんです。プレッシャーを感じると同時に、
少しでも伝統を守る役に立てているんだな、という誇りも感じています』
それでもまだまだ職人としては見習いなので、
今は地道なクリーニングなどのルーティンワークに近い作業が中心。
今担当している仕事が満足にできないと、次の段階にはなかなか移れないが、
それでも新しい発見は常にあるという。
「毎日新しいゲームをプレイしているような感じですよ。
『ここにこんなアイテムが!』『こんな倒し方が!』みたいな(笑)。
特に僕は大学の時に、研究のために実験を繰り返す日々を送っていたので、
それに近い部分がありますね。
新しいことをどんどん知りたいという人には、向いている仕事だと思います」
将来的には「今はまだ半人前だけど、いつか『日本の伝統を支える職人です』
と言えるようになりたい。ただの修繕だけでなく、
着物を総合的にプロデュースするような仕事もできれば」
と夢を語る谷岡さん。と同時に、化学を専攻していたからこそのこんな野望も?
「汚れ落としにはいろいろな薬品を使うので、
新しい方法とか薬品を開発できないかと思ってるんですよ。
社長にもそれを期待されているみたいです(笑)」
様々な企画で、着物の需要自体を上げていくことが課題
最近、特に京都は「京都きものパスポート」を発行するなど、着物を見直す動きが出てきている。
レーザープリンタなどの新技術によって、安価な着物もたくさん出てきて、
気軽に着物に触れられる機会は増えてきた。
とはいえやはり、この業界に対する将来的な不安はぬぐい切れないところだろう。
「確かに着物が増えるのはいいことですが、あまり安い着物ばかりだと、
何10万も出してまで直そうとするのか? と考えますよね。
多分20~50年後が大変じゃないかと。
でも逆に言うと、小手先で誰もがすぐに始められるような、
そんな簡単な技術を扱っているわけではないからこそ、
大手企業が参入できない世界ですし、特に京都は祇園という街もあるので、
着物がなくなるということはないはずです」
現在松川調整所では、洋服や小物類などの着物以外の修繕・加工作業も請け負うことで、
別の形で職人技を生かす道も開拓している。
しかしやはり会社としては、着物の需要自体が増えることが理想。
着物で流しそうめんを楽しむ集いなど、着物の良さを伝えるイベントを
多数企画している中でも、特に驚きなのが「着物をあげる会」!
「着物を着たいと思ってる人は、潜在的に多いはずなんですよ。
高価な着物を今すぐ買うには勇気がいるけれど、
もし着物が手に入る機会があるならば是非着てみたい!
そういう人に着物をリサイクルして「あげる」ことで、着物に触れるきっかけを与えたい。
さらにうちでは、5回完結で必ず着物が着られるようになる着付け教室もやっています。
自分で着られると、着物って苦しくないんですよ。
ただ直すだけでなく、着物全般の相談に乗ることで、
多くの人が長く着物に親しむための環境をつくっていきたいと思います」
松川調整所には「職人にして、職人にあらず」というスローガンがある。
それには「技術さえあれば良い」という一人よがりにはならず、
お客様の思いを優先し、満足させられる職人であれ。という思いが込められている。
自分の大事な着物を人に預けるなら、その気持ちを汲んでくれる人たちにこそ預けたい。
たくさんの人たちにそう思われる限り、
松川調整所から修繕の仕事が途切れることはないだろう。
(取材・文/吉永美和子 撮影/大島拓也 コーディネーター/福田拓也)
Job description
募集職種
- 企業名・団体名
- 有限会社 松川調整所
- 募集期間
- 2014/10/19(日) 〆切
それ以降の募集につきましては随時こちらのサイトにてお知らせさせていただきます。
- 募集業種
- 総合加工部:着物の修繕加工など
- 雇用形態
- 正社員(試用期間3ヶ月あり)
- 応募資格
- 未経験歓迎
- 勤務地
- ■北山店
〒 603-8061
京都市北区上賀茂荒草町49-3
- 勤務時間
- 9:00~18:00
(うち1時間休憩あり、勉強会などもあり)
- 給与
- 17万円~
- 休日・休暇
- 日曜・祝日・年末年始・夏季休暇
- 待遇
- 通勤交通費(上限月1万円まで)
昼食費一部支給
技能手当
昇給/年1回 賞与/年2回
※一級染色補正士・和裁士:月2万円、二級染色補正士・和裁士:月1万円、ほか
- 採用予定人数
- 若干名
- 選考プロセス
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同サイトよりエントリー後、履歴書・職務経歴書をお送りください。
ご応募いただいたデータをもとに選考いたします。
一人でも多くの方とお会いしたいと考えています。
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【2】会社見学・説明会
まずは実際に会社の雰囲気を見ていただき、お仕事のイメージをつかんでください。
ご希望の方には、実際に体験していただくことも可能です。
(選考には一切関係がありませんので、任意でご選択ください。)
職場の雰囲気や、仕事のやりがい、疑問や不安など、何でもお気軽にご質問ください。
選考に進みたいと意思をお持ちの方のみ、面接へ進んでいただきます。
↓
【3】面接
堅苦しく構えず、普段どおりのあなたをお見せいただければと思います。
↓
【4】内定
一緒に働けることを楽しみにしています!
※ご応募から内定まで、6週間程度を予定。
※入社日はご相談の上決定いたします。
※採用・不採用の場合でもご連絡させていただきます。
- WEBサイト
- http://www.matukawa.jp/
- メッセージ
- 未経験でも、一人前に成長できます。
いま活躍する社員は、飲食店や運送業など異業種からの転職がほとんどです。
コツコツと経験を積み、長期的な目線で一人前になってください。
<一つでも、当てはまる方はぜひ>
一生モノの技術を身につけたい方
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