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「今もファンであることに変わりはないので、新商品ができる過程を見られるのは本当にうれしい。たくさんのスケッチからアイディアを絞り込んで、陶磁器の作品が生み出される大変さと喜びを知ったぶん、接客する時にそういった背景を交えながら商品の魅力をお客様に伝えられるようになりました。昔は自分だけが楽しめれば満足していたけれど、今は色んな人にもっと知ってほしい、みんなに共有したいという気持ちが強いんです。」

「この会社に入って変わったのは、相手が望んでいることを先回りして叶えようという意識が芽生えたこと。代表の富岡さんをはじめ、こちらの気持ちを汲み取ってくれる人が多く、たとえば店頭接客中、忙しいときにはバックヤードから誰かがさっと入ってきてラッピングを手伝ってくれます。自分のことさえやっていればいいという感じの人は一人もいないですね」

「個人の能力も大事ですが、『全体のためにどう貢献できたか』も評価の基準として重要視しています。自分の能力を人のために活用できる人、まわりのスタッフを気遣える人は、商品に対してもお客様に対しても誠実な対応ができるからです。今いるスタッフも互いに協力しながら個々に能力を高め合っていますが、組織全体をよくすることを第一に考えられる人と一緒に働きたいと思っています」

「スタッフの人数が少しずつ増えていくなかで、一人ひとりの意見や要望を丁寧に汲み取ることが難しくなってきたからです。毎日顔を合わせるスタッフもいれば、そうでないスタッフもいる。会社のルールや雇用形態についても曖昧な部分が多かったので、スタッフ全員から意見を出してもらって、ひとつずつ課題を解決していきました」

「ソフト面で取り入れたのは、全スタッフが参加する社内研修。前回は、バーズワーズというブランドを問い直すところから始めて、みんなでアイデアを出し合いながら新商品を企画しました。これまで僕と伊藤がやっていた仕事を体験することで、ものを生み出す大変さや喜びを少しでも実感してもらいたかったのです。デザイン思考やアート思考など毎回テーマを変えて、半年ごとに現在までに5回の研修を行いました。

ただ、研修を実施した一番の目的は、スタッフどうしの相互理解を深めることにあります。普段、顔を合わす機会が限られているスタッフだけでなく、毎日顔を合わせるスタッフも研修を通じて互いの新たな一面に気づくなど、相手を知る良い機会になったと思います。互いを理解し合って、心地よくいられることで、連帯感や一体感も醸成されるでしょうし、それが商品や店の雰囲気、接客や梱包の仕方などにも現れてくる気がするんです」

「僕らが安心して、心地よく働いていたら、お客様や取引先からここの商品は信用できると思ってもらえるはず。『大切な暮らしの風景をつくる』をブランドの目標に掲げてものづくりをしているからこそ、自分たちを大切にできる社風でありたいと思っています」

「一番わかりやすいところで言えば、売上も利益も伸びました。目標に向かって歩み出したことで、明確な成果として表れたのでしょう。

当社では、売上や利益をすべてオープンにしていますし、売上や利益によって賞与や昇給の額、配分比率を決めています。それも実は『昇給や賞与の金額がどういう理由で決められているのかを知りたい』というスタッフの声をもとに取り入れた仕組みです。たとえば同じ金額の賞与でも、評価が高いのか、努力が必要なのかを本人が理解し、納得できるような形に改めたんです」

「仕組みづくりには手間をかけるべきだと思っています。やはり、安心して働ける環境を整えることで、スタッフが各々で生産性を高めてくれるんです。指示されて動く受け身の仕事なら『100言われたら100までしかやらない』けれども、自ら考えて動くと『100以上のことをやってみる』。その結果、会社は売上や利益を増やして新しいことにも挑戦できるし、本人もやりがいや達成感を味わえるんです」

「半年ほど前から、2週間に一度のミーティングを行い、みんなで案を出し合いながら、企画内容を煮詰めていきました。私は焼き菓子のセットを販売するために、お菓子づくりをお願いする製菓店選びから箱作り、値段設定まで任せていただいて、やりきることができたのはうれしかったですね。

もちろん、やりたいことを何でもやれるというわけではありません。富岡さんにアドバイスをもらってやり方を変えることもあれば、内容自体を再検討することもあります。大事なことは『自分が好きで買いたい、人に贈りたい』と思うものを提供する、という思いの軸がぶれていないかでしょうか。

たとえばオリジナルのiPhoneケースを作ればある程度売れるかもしれませんが、バーズワーズのカラーには合わないという判断になればつくりません。そこは人材と同じで、今すでにある商品ラインナップと馴染むかどうかが重要な基準になっていると思います」