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完全週休二日制で、年間休日は123日。残業はほとんどなく、平日は17:30になるとオフィスが真っ暗になる。子育てや親の介護をするために時短勤務で働くスタッフも少なくない……。

建設業界ではありえないと言われる「ザ・ホワイト」な働き方を実現しているのが、京都市に本社を構える株式会社KMユナイテッドです。

設立は2013年。親会社の株式会社竹延で働く塗装職人の後継者問題を解決すべく、社内ベンチャーとして産声を上げたKMユナイテッド。動画を通じた職人育成や技術継承ができるスマホアプリ「技ログ」、多言語対応の勤怠管理スマホアプリ「コネキャリ」など、世の中にないサービスを生み出してきました。

今回、人材を募集するのは建設アシスト職。ゼネコンで働く現場監督の仕事の半分を占める書類業務をサテライトオフィスからリモートで代わりに担う仕事です。具体的には、積算や見積書の入力作成、CADによる図面の作成や修正といった仕事が中心です。現場監督と二人三脚で現場をコーディネートし、生産性の向上を目指します。

勤務地は、大阪市内にあるサテライトオフィスです。進行中の建設現場の事務所に出向くのは週1~2回という勤務形態は、たとえ往復4時間かけてでも毎日現場に通うのが常識とされている業界では異端です。「駅近で通いやすい」ことが、子育て、介護中の人たちや建設業界志望の人たちなど、幅広い層の求職者を惹きつけています。

施工管理からの転身。好きな建築の仕事を諦めない。

建設業界には、残業時間が多すぎる、休日が少ないという理由で現場監督が離職するケースが後を絶たないという課題があります。建設アシスト職は、その課題を解決するために生まれた仕事です。

入社1年目の山之内 貴宏（やまのうち たかひろ）さんも元現場監督（施工管理職）の一人です。ゼネコンに勤めるも、労働時間の長さやギスギスした人間関係ゆえ、入社半年で退職。挫折感を抱えながらも、飲食業界で接客の仕事を6年ほど務めたのち、好きだった建築関係の仕事に再挑戦したのです。

「小学生のとき、大工さんに憧れたことが原体験です。建物が完成するまでには数多くの工程があり、さまざまな人たちが関わっていると知ってからは、ますます建築の世界の魅力に惹かれていきました。いずれ設計の仕事をするためにまず現場を知るべきだと考えて、施工管理職を選んだのです」

KMユナイテッドに入社してから約1年。山之内さんは施工図をまとめる生産設計の仕事をする傍ら、リーダーとしてプロジェクトメンバーを束ねる役割も果たしています。諦めきれずに舞い戻った建築の世界。「辞めたいと思ったことは一度もない」理由は何なのでしょうか。

「やっぱり建築が好きだからですかね。それにKMユナイテッドでは、自分が努力した分だけお客様に評価してもらえるし、会社も認めてくれる。だから時間が経つのがすごく早いと感じるほど仕事を楽しむことができています。

週一回、現場監督と顔を合わせ、そこで依頼されたことに取り組んだり、何かを提案して自分で新しい仕事をつくったりして、『すごく助かってる』と言っていただけたときにやりがいを感じますね。

アシスト職としての仕事の範囲はかっちり決まっていないので、自分なりに仕事の幅を広げたり、新しい仕事を生み出せたりするところにも楽しさを感じています」

パソコンでのデスクワークと、建設現場でのコミュニケーションが仕事。不安や挫折も支えてくれるチーム

建設アシストとしてパソコンを使う仕事の内訳は、CADが2割でエクセルが8割。一般的な事務仕事とそう変わらないかと思いきや、重視されるのは接客業やサービス業で求められるような対人関係力です。工事を円滑に進めていくためには、現場やオンラインを問わず、現場監督とコミュニケーションを重ねることが欠かせないからです。

「普段心がけているのは、お客様（施主や現場監督）の要望に応えるだけではなく、お互いに何ができるかを模索しながらよりよい成果を目指すこと。お客様の話に耳を傾け、お客様自身が気づいていないニーズを引き出すためにも、観察力やコミュニケーション力は欠かせません」

2022年8月現在、「建設アシスト」職で働くスタッフは約100名。特筆すべきは、全体の8割が業界未経験者だということ。

「図面を見ても実際の現場のイメージが出来なかったりすると絵を描いてわかりやすく説明してくれたりと先輩方が丁寧に教えてくれるので、自分がレベルアップできている実感を得られるんです。質問しやすい環境にも助けられてきました。

ベテランの上司でも『まだまだわからんことがいっぱいある』と言うくらい建設の世界は奥が深いです。スキルアップに近道はないと思うので、もっとできることを増やしたいと思っています。

この仕事は一人でやれるものではなく、みんなの力やアイデアが集まって成し遂げられる仕事です。自分が得た知識や技術を、後輩たちが可能な限り早く習得できるようにつないでいく。その結果として、自分のチームが社内で重要な役割を任せられるようなポジションを獲得できればうれしいですね」

未経験でKMユナイテッドに入社し、困難を乗り越え活躍している社員も少なくありません。元営業職のある社員は、入社3日目に壁にぶち当たって大泣き。「職人さんも現場監督も皆、親切だけど、専門用語ばかりで何を言っているのかさっぱりわからない。すごく親切な外国人と会話している気になる」と打ち明けたそうです。

その心境が伝わったのか、担当するゼネコンからは彼に対するクレームも入りました。しかし、その1ヶ月後には「あの子がいい。あんなに真面目な子おらんから代えないでくれ」と名指しで請われるようになったのです。

顧客から評価されるようになると、彼の顔つきも見るからに変わっていったそうです。独学で知識を深めたり、CADスキルを身につけたりと、努力して自ら道を切り拓いた彼は今、オフィスメンバーを統括するチームリーダーを務めています。

自分で自分の限界を決めない。可能性を信じて行動すると「役に立てている実感」も増す。

そんなKMユナイテッドの職場環境について、最高人事責任者の倉田 真由美（くらた まゆみ）さんはこう語ります。

「未経験だから、女性だから、子育て中だから……という思考は、ともすればできないことの言い訳になってしまいます。自分で自分の限界を決めず、可能性を信じて行動に移すこと。

がんばろうと決めた人に対しては、私たちは100%でサポートしますし、絶対に一人にはしません。でも、とりあえずやってみようという中途半端な気持ちなら、やらない方がいいと思います」

倉田さんの経験上、大半の社員が入社後に2回ほど挫折しそうになるフェーズを迎えるそうです。それでも投げ出さずに自己研鑽に励んでいるうちにお客様から評価されるようになり、一皮むけていく。『お客様から頼んでいただける仕事も増えました』などと報告を受けると「泣きそうになる」と倉田さん。

「アシスト職の魅力は、お客様の評価がダイレクトに伝わってくるところ。時にはお叱りをいただくこともありますが、自分次第で評価は高まり、役に立てている実感も増すと思います。

皆が何度となく『ありがとう』と言われているのを見ると羨ましく感じますね」

誰もが挑戦の切符を手に入れられるように

業界に先駆けたKMユナイテッドの取り組みは、「改善の竹延」と呼ばれる親会社のDNAを受け継いでいます。

子育て中のママ向けに1日4時間の時短勤務を導入したこと。身体に悪い有機溶剤を廃止し、安全な水性溶剤に切り替えたこと。それにより夜間工事が減り、残業時間も減ったこと……。

業界の慣習にとらわれない竹延の取り組みは注目を集め、「新ダイバーシティ経営企業100選」「地域未来牽引企業」などに選ばれた他、「グッドキャリア企業アワード2018 大賞」も受賞しています。

KMユナイテッドが掲げる「Impossible is Nothing＝不可能はない」というモットーの源にあるのが、「だから何？」という竹延社長の口癖です。

「ベンチャー気質に富む当社では、常に変化しながらよりよくしていくことを是としています。試しにやってみて、ダメならば引き返せばいい。前例がないからこそ、自分たちでつくっていける楽しみがある。

自分のライフスタイルに合わせて、働き方をカスタマイズできるのも社員から喜ばれているところです。たとえば毎週1時間の研修は就業時間中に行いますが、都合がつけられない人は、自社アプリでいつでもどこでもその内容を視聴できます。また、もっと稼ぎたいのであれば、土曜日に働く、残業して働く、という選択肢もある。

人の数だけ生き方があるように、人の数だけ働き方があっていい、というのが私たちの考え方。努力し続ける人を正当に評価するために、産育休の取得者、時短勤務者だからといって査定を下げるようなこともありません。仕事と子育て、介護を両立しながらも、キャリアアップを犠牲にしない働き方ができる環境を整えているんです」

そう語る倉田さんも業界未経験者であり、KMユナイテッドに入社する前は人事を専門に担当した経験もありませんでした。

「プライベートは変化を嫌う保守的人間。マクドナルドではダブルチーズバーガーセットしか注文しません（笑）。なのに仕事では、外国語をまったく話せないのに外国人材の採用も担当しています。5~6個の通訳アプリを活用しながらオンラインでやり取りをし、受け入れを進めるのです。

“無茶振り”にも先入観なく取り組んでみれば想定外の景色が見られる仕事だと思いますが、きれいごとを言うつもりはありません。建設業界は旧態依然とした体質が残っていますし、変化を望んでいない人たちもたくさんいる。すべての人が、建設アシストを導入して満足しているわけでもありません。

この働き方を世の中のスタンダードにするには長い道のりが待っています。結局そのプロセスを楽しめるかどうかはその人次第なんです」

誰もがインフルエンサーになりうる「YouTube」や、誰もが創作を始め続けられる「note」のように、国籍や性別、経験、境遇を問わず、誰もが挑戦の切符を手に入れられる仕組みを整えてきたのがKMユナイテッドです。

自分自身を直視し、自力で逆境を乗り越え、人に必要とされる喜びを知ったとき、それは何物にも代えがたい財産になる。そんな物語を生きたい人にとって、KMユナイテッドは格好の舞台になるのかもしれません。