「山崎亮さん!働くってなんですか?」 地域デザイン特集企画オープニングトークイベント <イベントレポート>
2013.09.16
NEWS
■ こんな働き方もおもしろい
コミュニティデザイナー、山崎亮さん。今、日本中で山崎さんを求める声が後を絶ちません。
山崎さん率いる事務所「studio-L」が現在抱える案件は、日本各地で実に80件。
常に「世界最先端」と評価される仕事に取り組むこのチームの働き方、
そして山崎さんの仕事に対する考え方は、今の日本の一般的な働き方とはちょっと違います。
多くの人を惹き付けるstudio-Lの仕事の魅力とは
一体どのようなものなのでしょうか。
さまざまな仕事の魅力に迫るハローライフの特集企画。
第一弾として開催中の「地域デザイン・まちづくり特集」では
オープニングイベントへ山崎さんをゲストに迎え
その仕事観についてお話していただきました。
■ コミュニティデザインって?
そもそもコミュニティデザインとは一体何なのか。
山崎さん曰く、
「地域に住んでいる人たち自身がその地域を元気にするために、
人と人を繋げ、『何かやろう!』という気持ちを高めていくための手助け」
を行うのがコミュニティデザインです。
ハード(建物)をデザインするのではなく、ソフト(利用者の繋がりなど)をデザインしていく。
今、注目を集めている「ものをつくらないデザイナー」という一風変わった仕事です。
山崎さんがコミュニティデザインを始めるに至ったきっかけは、
1995年、学生時代に阪神淡路大震災を経験したことでした。
学会からの要請があり、ランドスケープを学んでいる学生として現地調査を行った山崎さんは、
見渡す限り建物が全壊している様子を目の当たりにします。
「これだけ全壊の建物が多いのにどうやって復興していくんだろう?
という思いになっていた時に、家族を失われたような被災者の方同士が
住吉川でお皿や服を洗ったり、励まし合ったりしている姿に出逢ったんです。
こういう状態でも、一緒に町を復興していこうという気持ちがあるんだなと。
逆にこういう気持ちが、都市計画や復興に必要不可欠なんだと思いました。」
そのころからハード(建物)だけをつくる建築に疑問を感じ、
大学院や、卒業後に就職した建築設計事務所でも、
いかにソフトをデザインしていくかという手法を学んでいきます。
独立し、studio-Lを立ち上げたのは2005年。
立ち上げ一年目の年収はごくわずか。
ソフトのデザインという仕事だけで生活するということは厳しく
初めの2〜3年は設計の仕事も並行して行っていたそうです。
しかし徐々に成果が認められ、現在ではデパート、離島、公園、過疎地など様々な場所で
コミュニティデザイナーとして活躍されています。
■ つくらない最先端
今回の地域デザイン特集の展示企画「山崎亮の働き方展」にともないstudio-Lの方々にインタビューを行ったのですが、
その際、スタッフの方の多くが口にされた言葉があります。
それは、「つくらない最先端」。
地域に住む方々とワークショップを行い
そこで出た意見をまとめ上げていくのがstudio-Lの役割になるのですが、
デザイナーという肩書きでワークショップを行ってしまうと
建物だったり本だったり、「ものをつくってもらう」という方向に
話が進んでしまいがちなんだそうです。
そこで山崎さんは独立後2〜3年後からは
「僕たちは何もできない人です」と伝え、ワークショップをするようになりました。
デザイナー、設計。それぞれが出来ることを隠すことで
地元の人たちの連帯感や自発性、モチベーションを高めることができます。
studio-Lが現場を離れても、自走できるコミュニティーをつくらなければならないので
至れり尽くせりはNGだと言います。
となると「なんの専門家なの?」という話になってきますが、
話し合いのコーディネートをするだけではなく、
「他の事例を調べ上げて、その取り組みが日本では最先端であるということを担保してゆく専門家」
と言えるのかもしれません。
「まだどこでもやったことのないことにチャレンジしている」
という自信は、住民のモチベーションに繋がります。
■ 「働く」についての西洋の考え方、東洋の考え方
今回、山崎さんが考える「働き方」について、面白い話をしてくださいました。
同じ「働く」でも、西洋と東洋では考え方が違うのだとか。
「西洋の仕事観は、『労働は、なければないほどいい』という考え方なんです。
リンゴを食べたアダムとイブは、天上界から地上界へ落とされますよね。
地上界というのは、畑を耕さないと実りが生まれない土地なんです。
理想郷のイメージの天上界が労働のない世界ですから、
いかに楽に仕事をしていくか?と努力してきたのが西洋の仕事観。
だから早期退職・ハッピーリタイアに憧れて余生はゴルフに釣りに別荘に…
という考え方があるんですよね。」
その一方で東洋の仕事観とは
「仕事を通じて自分の人間性の価値を高めていく」という考え方です。
退職の時に「おめでとう!」というような西洋のハッピーな雰囲気はなく、
どこかに寂しさがありますよね。
仕事以外で楽しく生きていく、というような考えになりにくいのが
日本的な働き方の特徴だと山崎さんは言います。
学生時代、山崎さんはある友人と、
「俺は趣味に生きる!仕事は定時で切り上げて趣味の時間をつくる!」(友人)
「いいや、仕事自体を趣味にしたほうがいい!」(山崎さん)
という議論をしたことがあったそうです。
今、その方は公務員になられて趣味の時間を楽しんでいらっしゃるそうですが、
山崎さんは、仕事を趣味にするという道を選ばれました。
どちらがよいという話ではなく、「しあわせな働き方」は人それぞれということなのかもしれません。
山崎さんは、仕事と遊びを分けてしまうのではなく、
「勤めの時間も、学ぶ時間も、遊ぶ時間も、
全てが人生を高めていくための時間であり、楽しい遊びの時間である。」
と、そう考えます。
そんなstudio-Lの働き方に憧れて、多くの若者が訪れるのかもしれません。
■ 仕事のやりがい(8つの儲け)
studio-Lの中には、お金だけではない独特の「儲け」の考え方があります。
コミュニティデザインという仕事を行っていく中で得る「儲け」とは…。
①友達・先輩
日本各地の仕事現場で、1カ所100人×80箇所ぐらいの人達とやりとりを行います。
自分の父親ぐらいの年齢の方も含めて、色んな地域に知り合いができます。
②地域の情報
地域の方々から、「この地域にはこんな言い伝えがある」「こんな特産品がある」
という色々な情報をもらえます。
③食事や温泉
地域へおうかがいする度に、ごはんを食べさせてもらったり、温泉に連れていってもらったりもします。
④季節の贈り物
大阪や伊賀の事務所には、お世話になった人々から3日に1回は贈り物が届きます。
新鮮な野菜・採れたてのお米など季節のものをいただけます。
⑤知識・技術
困っている人がいるほど、自分たちのスキルアップになります。
仕事での経験はすべて次の仕事に活かされる知識や技術になります。
⑥感謝の言葉
「来てくれてよかった!ありがとう!」と、地域の人々からお礼の言葉や手紙をいただきます。
⑦一緒に働く仲間
studio-Lの仲間とは一生の付き合いになること間違いなし。
熱い気持ちを持った仲間と出会うことができました。
⑧業務の費用
プロジェクトを達成したときに、報酬としてのお金をいただけます。
お金だけではない儲けを得ていくことが、次もがんばろうという気持ちの原動力になっています。
「studio-Lは、ぼろ儲けしている」
メンバーは、そう言って胸を張ります。もちろん、お金の意味ではなく。
■ 東北芸工大 コミュニティデザイン学科誕生
そんな山崎さんが今年、81件目のプロジェクトに取りかかられました。
「どの地域の行政の方も、地域が疲弊している現状にぶちあたっているんです。
studio-Lにも依頼がたくさん来て、本当は全部関わりたいのですが、
現在25人のメンバーでこれ以上プロジェクトを抱えれないという現状もあります。
ですので、今年は80件のプロジェクトで依頼受け入れをストップしていたんです。
そんな時、東北芸術工科大学からコミュニティデザイン学科設立の話がありました。」
東北は、まだまだこれから町をどうするかの話し合いが進む場所です。
復興を進める東北という地域に、今後間違いなくコミュニティデザイナーが
必要になると感じ、81件目のプロジェクトとして学科新設に関わることを決めました。
「東北の地で学生を育てながら、現地のコミュニティデザインを行っていく。」
そんな新しい学科が、来春世界で初めて誕生します。
■ おわりに
「僕らの1週間を見ると、ほとんど食べたり、誰かと話をしたり、
移動したりしているので、1日遊んでいるようなものなんですね。
今日だって僕はここで2時間遊ばせてもらっている感覚なんですよ。
先日DJポリスが話題になりましたが、どんな仕事だって楽しくできるんです。
ワークとライフを分けて考えるのではなく、ワーク=ライフ。
そんな毎日が送れるようになったらいいなと思っています。」
トークイベントの最後に、山崎さんにお伺いしました。
「山崎さん、働くって何ですか?」
その問いに対する山崎さんの答えは、パネルに書き起こしていただき
現在開催中の「山崎亮の働き方展」で展示中です。
ぜひ観にいらしてくださいね!
トークライブの後は交流会。
山崎さんのお話を受けた会場も熱気を帯び、
交流会での会話もみなさん弾んでいらっしゃるようでした。
今回のハローライフの特集企画、そんな山崎さんの働き方に関する展示は
9月30日まで開催中です。詳細はコチラ。
多くの方のご来場を、お待ちしております!