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<岡山県美作市>誰もが挑戦できる場所。

date:2014.10.04

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岡山県北部にある美作市梶並地区で、地域の人々や行政と歩調を合わせながら、
独自のアイデアで地域おこしを仕掛ける藤井裕也さんを訪ねました。
目印らしいものがない田園地帯で迷いつつ、地域の方に道順を伺いながら、
ようやく、藤井さんが仲間と制作中の新拠点“山村茶屋”へ到着。
ご老人しか見かけなかった道中とは打って変わって、こちらは若者たちが楽しげに集っています。

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大阪市内から車を走らせ、約2時間で辿り着いた岡山県梶並地区。
陽当たりのよい山あいに田畑が広がり民家が点在する、こじんまりと、それでいて気持ちのいい集落です。
2011年の春、岡山市内から美作市上山(うえやま)地区に移住し、現在、梶並地区へと居を移した藤井さん。
それまで大学院で考古学を研究し、自ら立ち上げたサークルで国際協力の活動もされていたそうですから、
そもそも田舎暮らしのきっかけは!?
まずは移住のいきさつを訊いてみました。

「アジアの田舎に大学生を集めて、学校やバイオマスエネルギーの施設を作る活動をするうちに、
実は過疎が進む日本の中山村地域にも可能性があるんじゃないかと興味を持って、
地元・岡山の田舎をまわり始めたんです。
そのとき、美作市の上山地区で8,300枚の棚田を再生させようと活動する若者たちに出合い、
ここなら仲間がいるし、地域おこし協力隊という制度も整っていたので、やれる!と。
そう思ったのが、一番最初のきっかけですね」

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地域おこし協力隊とは、人口減少や高齢化などが深刻化する地方に地域外の住民を受け入れ、
定住・定着を目指す活動のこと。なかでも、ここ岡山県美作市上山地区は、
地域おこし協力隊のパワーがあり、成功例として全国各地からアツイ注目を集める地域です。
“地元のウェルカムな姿勢”と“行政”、さらに“協力隊のビジョン”、
この3大要素が、地域おこしにとって理想的だと言われているポイントなんだそうです。

「同じ美作市でも、行政と協力隊だけが進めて地域が噛んでいないところや、
そもそも地域の受け皿がないところに協力隊を入れてる地区もある。
そんな中で上山は、元々移住者たちがやっていた活動に行政が乗っかった特殊なスタイルで、
協力隊主導の活動ができる体制が整っていた。だから、僕は入り口がラッキーだったんですよね(笑)」

地域への入口として、地域おこし協力隊への参加を選んだ藤井さん。
いわく、その利点は「大きな活動に携われること」だったから、と言います。

「たとえば、5ヘクタールという広大な耕作放棄地とか、地域のすべての空き家の利用を任せてもらえる。
これは普通なら絶対に一個人では出来ないことですよね。
だけど、いわば“村の未来を担う”公的チームとしての
地域おこし協力隊なら、住民の同意も得られやすいですしね」

ただし・・・と、口調が少しだけ変わる藤井さん。
「メディアに取り上げられる機会があり、いろんな方面からの矢面に立つことになったりもする。
あとはやっぱり行政や地域住民からの期待もあるので、決して甘くはないというところは
覚悟しておいたほうがいい。田舎暮らしをしたい、自分の好きなことだけをしたいという感じなら、
個人的に移住する方が良いですね」。

ここで協力隊の一員として移住した藤井さんの暮らしぶりを覗いてみると・・・
住んでいる場所は、仲間とのシェアハウス。なんと、移住したての1〜2か月は、
地域の中をめぐっては毎日いろんなお家で夕御飯をごちそうになる(!)という体験を経て、
以降は仲間と鍋を囲み、毎日、温泉へ。そんな、のどかな暮らしを送ったといいます。

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では、肝心の仕事は?と聞くと、「そりゃもう1年中、草刈りばっか(笑)」。
それまで、畑仕事の経験は皆無だったそうですが、「勉強のため」と、
とにかくただただがむしゃらに、地域の人から言われたことを根気よく続けたと言います。
「草を刈れと言われれば刈り、焼けと言われれば焼く。できることを必死でやりました。
地域の人に、本気かどうか試されてると感じていたから。

真剣に取り組む姿勢を見せて、はじめて信頼してもらえる。協力隊の先輩たちを見て学びましたね。
でもね、ほんとに草刈りしかしてなかったから、結局、上山での実績はゼロ…かな(苦笑)」。

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そう謙遜しながらも、その懸命な姿勢と人の懐にすーっと入っていける人柄。
そんな「藤井さんらしさ」が買われることになり、協力隊の一員として地域づくり会議に参加していた
梶並地区から、「うちへ来てほしい」とラブコールを受けるのです。

「ありがたい話やなと思いました。そろそろ自分のステージを持ちたい、ゼロから何かをはじめたい、
そんな想いも出てきた頃だったので。ただ、上山地区は岡山市内から約50分なんですが、
梶並は1時間45分程かかるので、迷いもありました。
でも、馴染みの知り合いがいるとか、お金があるからっていうことが理由でやるんじゃないでしょ!って
自分を奮い立たせて、川に飛び込む勢いで(笑)。
とにかくチャレンジしたかったし、何より大きかったのは僕に来てほしい!と言ってくれて、
それを受け止めてくれる地域の人がいたから、ですね」。

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2012年の春、地域おこし協力隊を離れて独立。梶並で一人暮らしを始めます。
地域のあれこれを温かく教えてくれる人々がいる一方で、「最初は孤独で泣きそう」だったとか。
「田舎で、よそ者一人ぼっちって、すごい寂しいんですよ。
しかも、僕一人では出来ることが限られてしまう…と悟って。これは、何がなくともまずは仲間が必要だと」。

もし、田舎でのんびりと暮らすだけなら、もしかしたら仲間は必要ないのかも知れません。
けれど、藤井さんが目指したのは、地域での新しい働き方を作り出し、
若者が“踊って暮らせる”実例を示すこと。
過疎化する田舎こそが、さらなる取り組みや事業にチャレンジしていける“現代の最前線”であると確信し、
地域でまだ眠っているポテンシャルを最大限に活かしたいと考えたからこそ、
活動の幅を広げてくれる仲間が必要不可欠だったのです。
そこで、かつての活動拠点であった上山地区で出合ったデザイナーの能登さん、
知人からの紹介で出合ったWEBデザイナーの赤星さんを呼び込み、本格的に活動を開始したといいます。

彼らが、活動するにあたってまず取り組んだこと。
それは、地域の人の声に耳を傾け、“この地域でできること”、
そして“地域外へアピールできる資源”を探ったといいます。
その結果、新しい使い手を待つ“空き家”と、若い担い手を求める“仕事”が多いことに気付き、
あみだしたのが、“山村シェアハウス”です。
これは地域の空き家をシェアハウスとして活用し、都会からの移住希望者を受け入れながら、
彼らの生活費を生み出すための仕事を紹介するという画期的な試みです。
それも第一号入居者として、2年間ひきこもりだった青年が移住してきたことにより、
想定外の展開が生まれました。

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「ひきこもりやニートでも、ここで暮らせば変わるかもしれない。
その人を信じてみようと思って、受け入れることにしたんです。
すると、はじめは無口だった彼が、めちゃめちゃしゃべるようになって(笑)。
僕らはひきこもりとしては扱わない。
シェアハウスの部屋を散らかせば管理人が注意するし、勝手に人の家に上がり込めば地域の人に叱られる。
メンバーや地域の人との生活を通して変わったのかもしれない。
あと、“ニートが耕作放棄地の再生活動をしてる”とメディアの注目を浴びたことで、
自らの居場所を見つけて、社会にコミットする面白さに目覚めたのかも。
そして高齢者が多い地域では、“若者”というだけで重宝されるんですよ。
実はこれってすごい財産だと思うんです。特になんにも資格なんていらないですよ。
電球の交換から雪かきまで、いろんなことを頼まれる。ただただその頼みにしっかりと応える、
そんな経験を続けていると、自然と“自分ができること”を自覚するようになるんですね。
しかも必要とされる実感が浮かび上がってくるし、
次第に顔なじみも増えておすそ分けなんかももらったりして」。

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都市部では、得てして“経験がない、即戦力ではない”と言われがちな“若者”という武器を、
ここでは最大限に活かせる。そんな地域ならではの利点があったからこそ、
山村シェアハウスは、ひきこもりやニートの社会復帰の場所となったのでしょう。
現在は“人おこしプロジェクト”という活動に発展し、実際のシェアハウスでは、
3人のひきこもり・ニート組と、藤井さんを含む3人の起業家がひとつ屋根の下に暮らしているそうです。
「2年以上住んでる人もいれば、半年の人もいる。シェアハウスを出て、協力隊に入ったり、
地元へ帰って起業した人もいます。ここは田舎暮らしの入口であり、輩出するのが役割。
例えば、夏は梶並で暮らして、冬は東京で暮らす、そういう人もOKです。
地域の人には理解できないと思うんですけど(笑)、僕らは理解できる。
僕らがベンチマークになっていればいい。ここにいると、人が成長していく様子がよく見えます」。

山村シェアハウス、それに連動するお仕事紹介の“山村ハローワーク”、
“人おこしプロジェクト”の他にも、“山村ワーキングホリデー”に “山村オーガニックファーム”、
“民芸新時代”などなど、数々の活動を同時進行しています。
また、今年は「教育の質を向上させることが地域にとって重要」と、美作市唯一の高等学校での講義を開講し、
さらに11月には、シェアオフィスとお茶漬け屋を合体(!)させた“山村茶屋”を開店。
なんとも予測不能なアイデアで、みんなをワクワクさせています。

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9月中旬の取材時は、アーティスト・イン・レジデンスの会場としてアーティストが滞在制作する傍ら、
藤井さんの仲間や、打ち合わせで訪れた美作市の職員の方がゆるりと集う、
早くも風通しの良い空間になっていて、今後のにぎやかな展開が目に浮かぶようでした。

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地域の資源や伝統文化、それに都市で培った経験や若者のセンスを掛け合わせる。
この“掛け算”の発想が、これからの地域の仕事を作るのでは?
藤井さんが仕掛けるプロジェクトの数々は、そんなヒントを与えてくれます。

そして毎日、おいしい空気を吸い、自然の幸を頬張り、地域の人々の温かい眼差しを感じながら、
仲間と新たな時代を作ろうと切磋琢磨する。
その快活な姿が、地方で暮らす“豊かさ”を自然と物語っている、なんだかそんな気がしてなりません。

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(取材・文/村田恵里佳 撮影/喜多舞衣 コーディネーター/榊 沙織)

▶そんな藤井さんのイベントはコチラ!「藤井さん直伝!自分×地方 仕事をつくるワークショップ」

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企画名 山村シェアハウス
日時 こちらの企画へのエントリーは終了しております。
活動内容 地域おこし活動への参加
山村シェアハウスのプロジェクトは、高齢化集落に若い働き手を!という地域おこし活動の一環です。
共同生活を送りながら、中山間地域での地域おこし・耕作放棄地の再生活動や山林の健全化活動などに取り組みます。
※活動内容は時期によって変わります。
活動場所 岡山県美作市梶並地区
応募資格 特になし
募集人数 特に制限なし
補助 参加費2500円/日/人(内訳:宿泊1500円、食費1000円)送迎あり※有料
参考webサイト http://www.sanson-share-house.com/index.html
応募者へのメッセージ 地域おこし活動地域での仕事を体験したい方は
ぜひどうぞ!
参加までのフロー エントリーフォームからのエントリー後、
折り返しこちらからご連絡させていただきます。
(1週間以内)
スケジュール調整の上、参加日程を決定致します。
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manabe yokota

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