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「新しい銀行像をつくろう。」藤原明のはたらくセカイ

date:2016.07.18

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世の中には、様々なはたらき方、生き方があります。
ハローライフでは、毎月さまざまなゲストをお呼びし、そのゲストが見ているセカイを覗かせていただくイベント「はたらくセカイ」を開催しています。
第六回目のゲストはりそな総合研究所の藤原明さん。
当日のトークイベントの中から「はたらく」のヒントをレポートにまとめました。

<profile>
藤原明(ふじわら あきら)/ りそな総合研究所リーナルビジネス部長
りそな銀行営業サポート統括部(大阪)地域オフィサー
りそな銀行コーポレートビジネス部(大阪)アドバイザー
りそなホールディングスグループ戦略部アドバイザー
りそなホールディングスオムニチャネル戦略部アドバイザー
立命館大学経営大学院客員教授
大阪電気通信大学金融経済学部客員教授。
大阪府まち・ひと・しごと創生推進審議会委員。
大阪産業振興機構おおさか地域創造ファンドクリエイティブ連携・高付加価値ビジネス
創出プロジェクト専門委員会委員。
これまで、多数の協働企画を展開。企業・地域における活性化の取り組みは 500 を超え、
その有機的なネットワークが広がる「わらしべ長者」的展開は各所で反響を呼んでいる。
年間 300 を超える講義・講演・ワークショップを展開しており、
雑誌 AERA では「日本を突破する 100 人」に選出された。

 

■プロローグ

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3月25日。元落語研究会だったという軽快なトークに終始会場が笑いにつつまれながら、藤原さんのはたらくセカイをのぞき見る夜が始まっていきます。さて、今宵はどのようなお話を聴けるでしょうか。

 

 

■企業や地域とコラボを仕掛ける銀行の新しいカタチ

 

塩山:(以下、塩)さて、まずは藤原さんって何をやってる人なの?という所から聞きたいと思います。普通の銀行ではありえないような企画をしてこられましたね。

 

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藤原:(以下、藤)これは天神橋筋商店街のまちおこしを狙った企画ですけど、商店街にあるグループ4店舗だけで発行した「百天満天百(ひゃくてんまんてんひゃく)」という500口座限定定期預金なんです。天満宮さんにオリジナルの証書入れに朱印を押してもらえるようにお願いして、記者会見で天満宮さんの朱印の調印式とかやりました。自分でハンコ押さなあかんとは思ってませんでしたけど…証書入れ500枚全部に押して(笑)利率も変わらんのに売れるわけないやろって言われてたんですけど、最終的に500口座で預金が11億円集まりました。

 

塩)おお〜。すごいですね。

 

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 塩)これはFM802とコラボしたキャッシュカードです。これも結構ヒットしたんですよね?

藤)第16弾までやったんですけど、カードが78万枚発行されました。これに絡めて色んなことやりましたね。りそな銀行の本店でライブとかやってました。ガンガン照明たいて(笑)ヘビーローテーションに選ばれた一十三十一さんのライブもやりましたよ。あとは花の柄のカードあるじゃないですか。銀行の店舗をポスターに合うように花で飾ってもらったり。「ステージ設置の工事音で電話が聞こえません!」とか「花瓶割れたらどうするんですか?」とかいろいろ言われましたけど(笑)今までなかったようなことをさせてもらいましたね。ほんと無茶してました。

 

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塩)このすいとうのキャンペーンも仕掛けられましたね。

藤)802さんと色々盛り上げていっていた頃、Re:S[りす]という雑誌の編集者さんの藤本さんを紹介してもらって、銀行ではあり得ないようなカッコいいREENAL digmeout EDITIONというフリーペーパーを作ってたんです。その藤本さんと「すいとうのある暮らし」を広げようとこの企画をフリーマーケットで展開しました。企業のスポンサーがいたわけでもないのに、先にやっちゃったんですね。

「銀行となんの関係があんねん」「誰がすいとう持ってくんねん」って言われてましたけど、開門と同時に走ってくる人がいたりとか、結局1,000人ぐらいの人がマイすいとうを持ってきてくれたんですよ。その時すいとう持ってきてくれた人たちがいい笑顔をしてたので写真を撮って、「すいとう帳図鑑」ってものをつくりました。銀行だけにね(笑)

後日それを象印さんに持っていったら、「しまった。やっといたらよかった」って象印さんが。それからマイボトルキャンペーンを象印さんが始めて、TVCMも始められ、ステンレスボトルの売上が伸びました。今も土曜日に802を聞いたら象印さんスポンサーの番組があるでしょ。このイベントをキッカケにスポンサーになられたんですよ。802さんはスポンサーを獲得できて、我々は象印さんと取引ができて、象印さんはステンレスボトル売れたでしょ?さらに、環境に優しいでしょ?これ誰も損してないんですよ。こういう「誰も損しない」やり方がありやってわかったので今もやり続けてるんですけど…銀行って色んな企業さんとお付き合いがあり、組み合わせし放題なんで、そういう世界って創れるなぁと、この企画で思えたんですよね。

 

■配属1日目で辞めようと思った新入社員時代。

 

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塩)藤原さんのパーソナリティというか、今の藤原さんをつくったルーツをお伺いしていきたいと思っているんですが。

藤)銀行ってほんとに遅れていた業界で、私が入社したのは25年ぐらい前ですけどね、ある日ワープロ持ち込んだことあるんですけど、めっちゃ怒られましたよ(笑)「ボールペンで書いて覚えるんや!」みたいな。「繰り返し使うようなものもあるじゃないですか?そんなん書式作って打ち込んだらええですやん!」って言っても「何を言うてんねん!」って先輩や上司にもすごいどやされてました。実は配属1日目で辞めようかと思ってました。色んなことが理不尽でもう全てが嫌で。

 

塩)同僚の方とかも、だんだん目の力が無くなっていくという話も以前仰ってましたね。

藤)同僚というか、若い人ですね。学生の時は目がキラキラしてんのに、なんて言うんですか、諦める瞬間があるんでしょうね。目の力が無くなっていくんですよ。私の場合は配属1日目で嫌になって大学の先生とかに相談したら、「せっかく入ったやから3年ぐらい続けてみたら?」ってアドバイスをもらいました。それから職場の人にインタビューしてみましたよ。まず女性の先輩に聞いたら「(1円合うまで仕事終わらんので)私銀行入って性格きつなったわ」とか言わはるし、男性の年配の先輩に聞いたら「給料ええから残ってるけど・・・」とか言わはるんですよ。当時入社したばかりの僕は偉そうに「これは社会悪や!」と思ったんですね(笑)そんな人を作り続けている会社ってどやねん?って。よけい嫌になったんです。

 

 

■「ずっと銀行おろ。変えたろ。」

 

藤)でもある休みの日雨の日に車を走らせてたんですけど、その時に何かが降りてきたんです(笑)。「そや。俺、銀行ずっとおろ。」って思ったんですよ。なんでかと言うと「銀行を変えたい」って思ったんです。でも同時に、「絶対変わらない」?と思ったんです。でしょ?でも、せやからこれは飽きないと思ったんです。これは多分一生かけても変わらないから、それをやり続けて楽しもう!って思ったんですよ。ハハッ(笑)

 

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塩)ええっ(笑)

藤)そう考えたら、クビなってもええわって思えるでしょ。「これはオモロイ!」って思った瞬間、肩の力がすっと抜けたんです。で、それからはさっき話したような、上の人が嫌がるようなこといっぱいしました(笑)「こんなやり方した方が楽じゃないですか?」とか、「縦割りなってますよ、言うたらしまいですやん」とか。そしたら町内の人気モンみたいになって(笑)

 

 

■新しい銀行像をつくろう。

 

藤)でもしばらくはあんまり銀行を変えるとかは言わなかったんですけどね、気が狂ったのかと思われそうなので(笑)でも、りそなショックというのを皆さんは覚えてらっしゃいますかね?平成15年に大和銀行とあさひ銀行とが合併してりそな銀行ができたんですけど、生まれて3ヶ月後に経営危機に見舞われ、公的資金が注入されて残高は3兆円を超えました。その時に銀行のトップとして、当時JR東日本の副社長だった細谷英二さんという方が会長になられたんですけど、社員に送ったファーストメッセージが「新しい銀行像をつくろう!」だったんですよ。わかります?平成4年に入社して、銀行変えようと思っても絶対無理やと思ってたのに、その11年後に「銀行を変える」と言うトップが出てきたんですよ。運命の出会いとしか言いようが無いでしょ。

 

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トップが替わってまもなく営業統括部という所に配置されて、そこから最初言ったような企画をどんどんさせてもらいました。その時の上司の執行役員の存在も大きかったです。バンバン企画書に印鑑押してくれて(笑)その上司が「お前会長のとこに毎月報告にいってこい。お前のこと面白いって言うてるし、俺やとうまいこと伝えられへんから」って言ってくれて。それまでの銀行では僕なんか(当時マネージャー)と会長が直接話するなんて普通あり得ないんですけどね、毎月報告に行っていたんです。会長は僕の話をいつもニコニコして聞いてくれるので、それを楽しみにどんどん企画書を書いていったんですよ。相当色んな企画させてもらいましたね。どんどん天狗になってました(笑)。

 

 

 ■お前、評判悪いぞ。予算ゼロにせぇ。

塩)その頃は銀行の中でも、藤原さんの評価って高まっていってたんですか?

藤)いやいやいや、逆ですよ、逆。なに天狗になっとんねんという状態です。でもそんなん無視してやり続けてやってたんですけど、ある日上司に呼ばれて「お前評判悪いぞ」って言われたんです。当時はもともとある予算枠の中でやってたんですけど、それも「使いすぎや」って。まぁ目立ちますわね。普通にCMとかやってたら目立たなかったと思うんですけど、ライブやったり、銀行のホールでチャリティ寄席とかやってたんですから。「それ銀行と何の関係があんねん」とかも言われはじめてたんですよね。そんなこともあって、予算を削れって言われました。「なんでこんなに評判高まってんのにカットせなあかんのですか?いやです」とか偉そうに言ってたんですよ。ところが、私の先ほどお話した上司(当時副社長)は「おまえな、もう予算をゼロにせえ」って言われて。「協働企画なんやったら、強みを持ち寄ったら予算かけずにできるやろ。お前にほんまに力があるんやったらみんなが助けてくれるはずや。ゼロでやってみぃ。それで残ったらほんまもんや!」で最後に「お前やったら出来るんちゃうか?」って言われて、「そ、そうですかね〜」って(笑)

 

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塩)(笑)僕はその時ぐらいにお会いしましたよね。

藤)そうですね。その時は周りから冷ややかな目で見られてて「今更普通の銀行員に戻れんの?」とか言われてましたけど、塩山さんとかも含め色んな人に支えられて、企画数は減らなかったんですよね。試行錯誤しましたけど、その後も先ほどの上司が銀行の副社長を退任してりそな総合研究所の社長になられて「お前に総合研究所の肩書をやるから、それ使ってなんか儲けれることやってみぃ」って言われたり。今までやってきたケーススタディも500個ぐらいあったし企業さんともお付き合いあったんで、ビジネスになるんちゃうかなぁって。6年ぐらい前ですけど、これがターニングポイントですね。

 

■銀行のあるべき姿とは?

塩)そういう感性というか、エモーショナルなことをやってる銀行って他に無いですよね。

藤)いや、なかなか出来ないでしょ。上の人に判断仰いでたらできないですよ。802さんとの企画とかでも僕ら判断してないですもん、全部802さんにいい意味でお任せ。それが良かったんやと思うんですよ。企画のこと分かるくせないのに素人がなんも言わんほうがええんですよね。「一番ええの出してください」だけ言うてました。

 

塩)藤原さんが考える銀行のあるべき姿っていうのは、どういうものですか?

藤)銀行は何万社と取引があるので、何かをつくりだすキッカケになると思うんですよね。一番嫌なのは、「銀行員です」って言ったら「お金貸してくれまんのん?」って言われることですね。落研ですって言ったら「なんか小話してください」って言われるのと一緒のような。そうじゃなくて、名刺見て「一緒に面白いことやりましょうよ」って言われたいですね。「銀行っていろんなこと仕掛けてくれるんでしょ?一緒にやりましょうよ」っていう。それが銀行のあるべき姿じゃないですかね。

 

 

■802さんも、足使ってアーティスト探してはるでしょ?

 

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塩)銀行の中に802の谷口さんのようにプロジェクトのディレクションを出来るような人がいればまた変わるかもしれないですよね?

藤)いや、銀行はそういうことはせんでええんじゃないですか?ディレクションは谷口さんのような人らに任せたら良いと思います。ただ覚悟を決めて「この人に任せる」っていう、そういう軸を持っている銀行員が増えればいいと思います。リスクを考えたら普通任せないじゃないですか。でも信頼関係で任せるという。ただ、任せる人を間違えたらダメですよね。だって802の谷口さんやからこそ任せたんですから。そこの判断っていうのは、銀行が融資を決める判断と軸が似てると思います。「目利き力」。銀行やからこそ、その目利き力あるんちゃうの?って思います。

塩)なるほど。

藤)802さんがすごいなって思うのは、アーティストを生み続けてるじゃないですか。ミスチルとかドリカムとか。なんで生み続けられたかっていうたら、毎日ライブ会場に802関連の人がいるんです。谷口さんもアーティストや次の才能を探そうと、毎日足繁くく展覧会やギャラリーに通っていて。私はその足繁く地べたはって才能を探している姿に感動したんです。銀行員もほんまにあれやらなあかんですよ。今儲かってる企業だけじゃなくて、「この企業、これからめっちゃ伸びるんちゃうの?」っていう目利きをできる人をこれから増やしたいです。そしたらそういうコラボ企画ってもっと増えると思うんですよね。

 

 

■エピローグ

 

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気づけば21時、というあっというまの2時間でした。
藤原さんの過去のお話の中であった「ぜったい変わりそうにないから、銀行に残ろう」という決断。
この話を聞いて思いましたが、制限がある中でのほうが、人は工夫をするのかもしれません。銀行という枠の中にいることを決めたからこそ、さまざまな企画や、新しい銀行のあり方を試行錯誤し実践する藤原さんという稀有な方が生まれたのかも・・・?

藤原さんの話の後、「藤原さんの話を聞き、あなたが今いる場所で始めようと思ったことは?」という問いを一人ひとりが考えシェアする、学びの深い時間になりました。

さまざまな業界を切り拓いた方の視点を知り、考え、対話し、気づきを持ち帰ることのできるイベント「はたらくセカイ」。
次回の開催もお楽しみに!